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東京地方裁判所 昭和43年(むのイ)455号 決定 1968年7月22日

主文

東京地方検察庁検察官緒方重威が昭和四三年七月一七日付なした別紙(一)記載の接見等に関する指定はこれを取消す。

理由

一本件申立の趣旨および理由は別紙(二)記載のとおりである。

二本件捜査記録によれば、被疑者は昭和四三年七月一五日頭書被疑事件につき逮捕され、同月一七日付の検察官の請求により勾留されたものであるところ、東京地方検察庁検察官緒方重威は同月一七日付で別紙(一)記載の如き接見等に関する指定書を発し、右指定は直ちに被疑者および被疑者の在監する代用監獄の主務者にその謄本を交付して告知されたことが認められる。なお本件申立書には右指定の日付は同月一八日である旨の記載があるけれども、これは前示の如く同月一七日付であることが右捜査記録添附の指定書により明らかである。

三ところで右指定はその文言やそのなされた趣旨から見ると検察官において被疑者とその弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下、弁護人らという)との接見等につき、検察官が別に発する指定書により指定する日時、場所および時間に限り許容し、それ以外には許さないことを指定したものであり、しかも前記の如く被疑者に対してその謄本の交付を以てその内容が告知されたものであり、かつ右の如きいわゆる一般的指定がなされた場合には監獄官吏は被疑者と弁護人らとの接見等は検察官においてさらに日時、場所および時間を具体的に指定しない限りこれを拒否する取扱であることは顕著な事実であることに鑑みると、右指定を以て刑事訴訟法第四三〇条にいう同法第三九条第三項の処分としてなされたものと解するのが相当であつて、これを以て単なる監獄官吏宛の観念の通知に過ぎないものと見ることはできない。そして被疑者において右一般的指定の結果現に右接見等の権利が制限される効果を受ける以上、あえて検察官に対し具体的指定を求めてその許否をまつまでもなく、右一般的指定そのものの取消を求める利益があるものというべきである。

四次に右処分の適否につき審案するに、刑訴法第三九条は、身柄の拘束を受けている被疑者は弁護人らとの接見等は原則として自由であり、ただ例外として捜査のため必要あるときは検察官において同条第三項但書所定の条件のもとに右接見等の日時、場所および時間を指定することができるものと規定したものと解されるから、検察官において同条第三項に基いて右具体的指定をしたときに初めてその指定した日時、場所および時間以外における接見等が制限されることになるのであつて、検察官において予め一般的に接見等を禁止する措置をとることは同条第三項に定める検察官の権限を逸脱することとなり違法なものとなるというべきである。

五よつて本件処分の取消を求める本件準抗告の申立は理由があるので、刑訴法第四三二条、第四二六条により主文のとおり決定する。(磯部喬)

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